カメカミ幸福論


 ・・・・ああ、殴りたいぜ!あんた何やってんのよってあのキレーな服を掴んでガクガク揺さぶってやりたい!

 ギラギラと発射する私の視線ビームを楽しそうに見返して、無駄に美形な神はまたにやりと笑った。

 電車の中では、小姑神は何もしなかった。私と小暮も大した会話はせず、ただ他の乗客と一緒に電車に揺られる。ガタンゴトンと電車の音だけが耳の中に響いて、どうして今私は小暮と二人(正しくは二人と一体、だけど)なのだろうか、などと考えていた。

 二人でこんなに近くにいたことなど勿論ない。それに今まではただの同期であって、こういう展開もなかったのだ。酔いは醒めつつあったし、私が男と一緒にいるなどということに少しばかりの居心地の悪さも感じていた。

 だから、最寄の駅まで来たところで小暮に向き直る。

「ここまででいいよ、ホント有難う。食事まで支払わせちゃったのがどうしても気になるんだけど・・・私に払わせてくれない?」

 ヤツは持ち手から手を離してドアへ向かいながら、チラリと私を見る。電車を降りたところで振り返って言った。

「いや、今日のは俺もちで。そうしたいんだ、頼むから、そうさせてくれ」

 ホームの上を人が流れていく。ここで別れたら電車賃もかからずに小暮を帰すことが出来る、そう思っていたから、私は邪魔にならないところへ移動しようとした。だけど腕をとられてアッサリとエスカレーターへ乗せられてしまう。

「ちょっとちょっと!ここでいいってば!」

「いいから」

「よくないわよ、いいって言ってるのに」

「公共の場で争うのはよくない」

「あんたがいう事聞いてくれないからでしょおおおお~!」


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