カメカミ幸福論


 だけど小暮はガッカリしているようには見えなかった。それどころか私に笑いかけて、駅の方面を親指で示す。

「帰るか?」

「・・・」

 あれ?私はちょっと眉間に皺がよってたはずだ。ガヤガヤと煩いバックの喧騒。その中を突っ切って、ダンの美声が頭の中に直接届いた。

『どうやら、ムツミが目的のようだな~』

 笑いを多分に含んだ声。私はそれにカチンときて、ヤツを睨みつけようと周囲を見回す。すると何と、後にいたらしい背後霊・・・・ではなくて、神は、いきなりトン、と私の背中を押したのだ。

「うわっ・・・」

「――――――おっと」

 パッと手を差し出されて私は小暮に捕まって止まる。うわわわわ~!急いで小暮から離れて、額を自分で叩きながら謝った。

「ごめん!」

「いやあ別にいいよ。ほれ、フラフラじゃないかよ、いいから送らせてくれ。山本さんに叱られるの俺だしさ」

「いや、でも本当にだいじょ―――――――」

「よろけといて何言ってんだよ。行くぞ~」

 小暮は背中を向けて歩き出してしまう。畜生~!!どうしてこんなことに~!私は仕方なく歩き出しながら、小暮の隣辺りを浮かびながらニヤニヤと笑うダンに呪いの視線を飛ばしていた。


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