カメカミ幸福論
朝っぱらから疲れてムカついている私とはえらく違うぜ・・・。
「・・・あ、おはよう」
少しおくれたけれど、一応微笑みのような表情を作って私は片手をあげる。くそ、社員証、どこいったんだよ!
「おお!早速この男だ。いいぞ、その調子でどんどんムツミに近づいてくれ!」
ダンが嬉しそうに小躍りしながら小暮の後ろをふわふわと浮遊する。もしかしてまた背中を押すつもり?私はそれに恐れをなして、パッとわきに退く。
「どうした、入らないのか?」
小暮がスマートに扉を開ける。私はようやくみつけた社員証を胸にかかげながらお先にとすり抜けた。
警備員さんにおはようございますと挨拶をしながら通る社員達にまざって、小暮が私に話しかける。
「昨日大丈夫だったか?結構酔ってただろう」
「ああ、大丈夫。お陰様でちゃんと帰れたし」
その後でダンとバトるくらいには元気だったし、それに小暮からのメールでヤツから逃げることも出来たのだった!あ、思い出した。私はムスッとした態度を改めて、ちゃんと心から小暮に笑いかける。君のお陰で現実に戻れたのよね、ありがと。そう思って。
小暮がパッと照れたように視線を外す。それから小声になってぼそっと言った。
「・・・記憶もちゃんとあるよな?えーと、その・・・昨日の帰り道の」
「え」
ぐっと詰まってしまった。まさかそんなことを聞かれるとは!ダンがワクワクしているのは知っていたから極力無視して、私はただ頷いた。
あ、エレベーター通りすぎちゃったじゃないのよ、もう。
「じゃ、また」