カメカミ幸福論
「・・・確かに慣れたけど、惚れるのはないと思うわ。だから天上世界もなしよ」
「慣れが一番大切なんだぞ。俺がいないと寂しいだろ~?」
「いや、きっと清々すると思う」
ダンは私の前まできてしゃがみ込んで視線を合わせる。・・・な、何よ。私は背中を壁につけている為にこれ以上は後ろに下がれずに固まってしまう。
「同棲している人間同士は、他に何をするんだ?」
「え?」
「ご飯を一緒に食べて、テレビを観たりして笑って、それから?」
「それから?ええと・・・それからって・・・」
ダンが近いので私は伸ばしていた足を回収する。体育座りの状態で、目の前の美形を見て怪訝な顔をしていた。
「ムツミはよく笑うようになったぞ。俺のお陰だ」
「同じくらいの頻度で怒鳴っていることも忘れないでくれる?」
「怒鳴っていても、ムツミは以前より毎日が楽しそうだぞ~」
私は返事をせずに、むすっとしたままで近距離のダンを睨みつける。認めるのは大変癪ではあるけれど、確かに以前の一人暮らしだったころよりは毎日は忙しいし、弾んでいるような気は・・・する。
すると、美しい光に見ている瞳を更に細めて、ダンが綺麗に笑った。
「ムツミ、キスしよーぜ」
「――――――は?」
「生活に張りが出て、楽しさを感じかけている。ならば次だ。あんたは女性であることを楽しむべきだろ」