カメカミ幸福論


「へーえ。判ってたのか、給料泥棒してたってこと。そんで、小暮と付き合いだしたって聞いたけど、本当か?仕事も男も手に入れてウハウハだってわけ?」

 何だ、こいつ。私は腕を組みたいのを我慢して、冴えない同期をじいっと見た。倉井は私の視線にちょっとたじたじとなったらしい。若干腰が引けたように声を弱くして更に言った。

「な、何だよ。お前が仕事出来ない女で彼氏もいなかったのは周知の事実だろ!」

 ・・・あー、面倒くせー。

 休憩に行こうとして余計な男に出会ってしまった。自分の運のなさを呪いながら、私は無表情のままで言葉を投げ捨てる。

「その通りよ。だけど今は、両方手に入れたの。羨ましい?」

 それから振り返りもせずに立ち去ってやった。

 倉井・・・・やっぱり、暗~い男だわ。



 運動公園はさすがに広いだけあって、隠れ場所もいくらでも見付かった。ほんの隣の芝生広場なのに木々が邪魔して社内の人間からは見えない場所に、私はよっこらしょと寝転がる。

 公園など、一人では行かない。

 それもこんな広大な芝生広場なんて小学生の時以来かもしれない。

 広くて、温かくて、心地よい場所だった。

「ああー・・・・気持ちいい」

 閉じた瞼に太陽があたって、キラキラと光を散らしている。温かくって、草のいい匂いがして、倉井とあったことで出来た眉間の皺が、ゆっくりとほどけていくのが判った。


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