カメカミ幸福論
・・・婦女子。あの時のガッカリ感は半端なかった。が、まあスカートを穿けというなら穿いてやる。別にそれくらい、足のムダ毛の処理が面倒臭いくらいで済むからだ。
だが、立場、給料に至っては「はいはい」では簡単に済ませられなかった。
社会人になって6年目には、同期の男性社員が皆出世した。それと同時くらいに「君、結婚なんかはしないの?」と上司から聞かれた。する予定はありません、と応えると、当時の上司は無駄にイジイジしてみせたあと、実はね、と話し出した。
君は女性だから、当社でこれ以上の出世はないよ。そう言われたのだ。
これ以上頑張っても役職にはつけないし、給料も上がらない。結婚相手がいるなら寿退社したほうが、退職金も今なら大目に出せるって。
私はしばらく黙ったあとで、辞めろってことですか、と聞いた。
すると上司は慌てて両手を振り、そういう意味じゃない!と叫んだのだ。ただ、知って欲しかったんだ、と。
彼にしてみれば親切なつもりだったのかもしれない。それを知ることで付き合ってる彼氏と結婚話が進むかも、とか、転職なりを考えて給料アップだって狙える、そう思ったのかもしれない。だけど、私には彼氏はいなかったし、気に入っている仕事内容で転職だって考えてなかった。大体営業職や企画などならともかく、事務員での転職は待遇がアップすることはほとんどないと思っていい。
私は憮然として、焦りまくる上司にただ頷いた。判りました、そう言って。
部下の仕事への意欲を失わせる発言をしたのだから、上司としては失格だ。女性では係長が一番上。そんなこと、5年もいれば勿論私だって知ってる。だけどそれを敢えて言われて、結婚に逃げたらどうだ、と言われるとは思わなかった。