カメカミ幸福論


 やる気を失ってしまったのだった。

 それまで魅力的にうつっていた仕事内容の全てから、いきなり色が消えてしまったみたいだった。

 やり方が雑になり、ミスが増えた。その罪悪感から不機嫌な顔でむっつりと黙り込む。

 それまでの私を知っていた同僚や後輩は突然の私の仕事意欲の低下に首を捻っていた。何人かは心配して、飲みに連れ出してくれた。だけど、私は曖昧に笑ってかわしていた。

 言えないでしょ、お前はここまでだよって言われたなどと。

 その当時は、そういうプライドはまだ持っていた。

 それが3年前。


 それ以来、極端にダラダラとやる気のない態度で勤務していたら、当然のごとく会社のお荷物となり、今では立派な窓際OLになったのだった。係長からは降り、だけど退職はしないのスタンスで毎日ストレスフリーな窓際族をしている。その内に後輩の女の子たちはどんどん寿退社していき、既に私が昔はまともに働いていたと知っているのは美紀ちゃんだけになってしまったのだ。

 私は使えないお局として有名だ。

 それも知っている。

 美紀ちゃんや、たまに会う出世した同僚達はそれを情けなく思っているらしい。

 それも知っている。

 だけど一度覚えた怠惰な毎日は、それはそれで結構居心地がいいものなのだ。まずストレスが溜まらない。残業などしないから給料は低空飛行だが、それでも定時6時の退社で私は更に自由になる。必要なものは買える。このままでも、十分かも、そう思っていた。


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