カメカミ幸福論
母親が、視界の端でため息をついたのが判った。
ここで従姉妹が自分の父母に文句をいう。家に嫁ぐとか古い云々。お母さんたちに関係ないんだから陽君やむっちゃんのことは放っておいてあげて云々。亀山兄妹は黙って食事を続ける。このノイズはいつものことだけど、どうにかならないかなー・・・と思って兄貴を盗み見ると、やつの耳の中に何かを発見した。
うん?何だ、アレは。
「・・・ちょっとお兄ちゃん、耳に何いれてんのよ」
トントンと膝を叩いて、私は小声で兄に言った。兄貴は私を一瞬だけ横目で見ると、座ったままでポケットの中を探る。そして出した手の中には耳栓。うお!なんてこったい!そんな秘密兵器があったとは!
私がそう思って仰け反っていると、娘からの説教にめげていない叔父さんからまた攻撃がきた。
「見合いなんか、どうだ?ん?陽介君も睦ちゃんも。いい人を紹介しようか?」
兄は聞こえない振りで無視しようとした。だから親切な私はヤツの耳から栓をぬいてやる。
「あ、こら!」
「自分だけ逃げようったってそうはいかないわよ~だ!」
しばしの睨み合い。母親が、まあ陽介ったら!と呆れた声を上げた。
「返せよ」
「嫌よ。食事中でしょ、兄貴も会話に参加しなさいよ」
がるるるる。兄妹で睨みあう。だけど、叔父さんが再度「見合い、どうだ?」と聞いた時、私が声を出す前に兄貴が先に言った。