カメカミ幸福論


 そういえば、美紀ちゃんと話に夢中でダンのことを忘れていた。あいつどこ行った!?私は店員さんの呼び出しボタンを片手で押しながら目だけを動かしてダンを探す。

 あの疫病神、一体どこに―――――――――――

「亀山さん?急にキョロキョロしてどうしたんですか?」

 美紀ちゃんはちっとも酔ってませんてな声で追求までする。私はわはははと笑って誤魔化そうと彼女を見て、飲んだばかりのビールを戻しそうになってしまった。

 美紀ちゃんの肩を抱くようにしてニヤリと微笑んでいるのは問題の疫病神!こ、こ、こんなところに!

 ヤツの綺麗な顔のすぐ近くには美紀ちゃんの怪訝な表情。二人でこちらをじーっと見ている。

 ・・・うおおおおおお~!!何してるのよ、バカ神~!!私はにこにこ~っと笑顔を作りながら、心の中でダンを罵倒しまくった。

 ヤツがあそこにいる限り私は睨めないではないか!そんなことしたら、素敵な後輩にメンチ切る嫌なお局になってしまう。あうううう~・・・。

「ムツミ、えらく楽しそうだったな~。いいことだ、本当」

「亀山さ~ん?大丈夫ですか?」

「これだけ俺の存在を忘れるくらいに時間を過ごすこともあるんだな。やはり会社のあとの自由時間は有意義に使ってこそだろ?」

「亀山さんてば。あら?ちょっとちょっと~?」


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