素顔のキスは残業後に
見つめあう一瞬。

何か聞き取れないほど小さな声が私の鼻先に落ち、右の頬を伝い落ちた涙の筋に彼の指先がそっと触れる。
空いている左の頬に優しく添えられた指先が耳を掠めると、そのまま髪に挿し入れられる。

ひんやりとした指の感触にトクンと震える鼓動。

そのまま頭ごと引き寄せられると、高い所から見下ろされる瞳がゆっくりと降りて



「桜井…」


ハッと息を呑むのと同時に、静かな響きを漏らした唇が降りてきた。
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