素顔のキスは残業後に
「同情って! アイツにそんなピュアな感情あるわけないって」

「ひどっ」

「だって。『事実だし、実際』」


語尾を柏原さん風に低く変換されて思わず吹き出す。


五月さんがそうは言っても、柏原さんの本心はわからない。
それに私の中にある消化不良の気持ちも――…


だけどこうして話を聞いて貰えるだけで、だいぶ楽になったな。

それからしばらく五月さんがはまっているサッカー選手の話や社内の噂話で盛り上がった。


そしてふと会話が途切れたとき、
五月さんは何かを思い出すようにポツリと言った。


「でも、そっかぁー。柊司もやっと前を向けたのかなぁ」


耳をしっかり傾けていないと流してしまいそうな。静かな声。
聞き返すように「えっ?」と声を漏らすと、五月さんは瞳を大きく見開いた。


「あっ……うん。まぁ、アイツも長く生きてたら色々あるよねーって話で」


ははっと誤魔化すようなぎこちない笑みを返されて、
ドクンと強く脈打った鼓動が煩いほどその音を響かせていく。
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