素顔のキスは残業後に
「柏原君。これはもう決定事項なの。

販売活路を広げる意味でも『B-Lover』雑誌関連の広告は、幅広い層を意識にしたものに変えること」


「ですがっ、プロジェクトのコンセプトは――……」


「えぇ。20代から30代女子をターゲットにしたものよね。

でもね最初のコンセプトと変わっていくこともある。

あなただっていくつものプロジェクトを仕切って来たなら、分かるでしょう? 


それにね。ここにきて上層部の意見が割れるってことは、あなたの責任でもあるのよ。

どうしても納得がいかないのなら、まずは納得させるだけの材料を用意しなさい」


突き放すような言葉に彼は表情を歪めて押し黙る。


静まり返った室内に不穏な空気が流れていく。

それを破ったのは野太い笑い声だった。

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