素顔のキスは残業後に
そうやって声を弾ませる雅人は『オヤジ』ではなく、親戚の姪っ子の結婚式を喜ぶ伯父さんみたいだ。

頬を綻ばせた雅人が歩み寄って来ると、私の隣に座っていた柏原さんも立ち上がる。


「この間は、どうも。無駄な心配はいりませんから」


なんて意味深な……

いや。雅人の言葉を肯定するようなことをさらりと言ってのけた彼に、

今度は私の胸が大きく弾んだ。



会議室での一件以来。

雅人に彼との関係について聞かれたことはなかった。
あのときは中途半端な優しさを匂わせる雅人を恨む気持ちもあった。



『幸せになってほしい』


雅人が私に言った言葉は、自分が振った女に言うべきではない。


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