素顔のキスは残業後に
「さっき、アイツを見て泣きそうになってたろ。

それ見て。俺がやってることって、弱ってる桜井に付け込むようなことしてるんじゃないかって。
それは、違うんじゃないかって思った。

けど、それも……違ったんだろ?」



照れくさそうな声に、柔らかく細まる瞳に、

どうしようもなく想いが溢れていく。


それを声にしたいのに声にもならなくて


頷くだけが精一杯な私の首筋に顔が埋められる。

いままでで一番熱い吐息が耳の裏を掠めていくと、



「――……好きだ」


不意打ちで届けられた声に胸が震えた。

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