素顔のキスは残業後に
大通りに面したジュエリーショップを出てからしばらく歩く。
ため息混じりの白い吐息が隣から漏れた。
「諦めいいのが悪いところ」
「えっ。いえ、本当にさっきのは……」
「何かに執着したり、欲しいものを必死に求めてないと、いつか大事なところで失敗するんじゃないの?」
鋭く突かれた言葉にドキッと上目遣いで見上げる。
顔を斜めに傾けた柏原さんが小さく笑った。
「――なんて、いまのは桜井のお母さんの台詞だけど」
「えっ」