素顔のキスは残業後に
「それじゃぁ、私。行きますね」


「あぁ」


仕事の忙しさもあって柏原さんと話す時間は少なかったけど、私は何事もなかったかのように振る舞っていた。


それと気のせいかもしれないけど、

柏原さんは私と一緒にいても、何かを考えるようにぼんやりしていたことが多かったように思えた。


由梨さんから聞いた話を彼にするのは、フェアじゃない。


話さなくてもきっと――

彼の気持ちは固まってるだろうから。


気になるけど、考えない。考えない。


呪文のように心で唱えて毎日を過ごした。

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