素顔のキスは残業後に
掠れた声を漏らした唇が震える。

膝から力が抜けそうになる。


グッと奥歯を噛み締めて必死に別の答えを探そうとするけど、それが誰のことなのかは明白で――……

胸を突く衝撃に瞼の裏が熱を持った。


いけない。いまの私どんな顔してた?


美香ちゃんともう一人の彼女が顔を見合わせる。


困惑した表情のふたりに、飛びそうになっていた意識を引き戻すことができた。


大丈夫。なんてことない。


そんな取り繕う笑顔を浮かべると、美香ちゃんは遠慮がちに言葉を続けた。
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