素顔のキスは残業後に
そんな彼女達の気遣いは、

一瞬で深手を負った胸に優しい色を添えるから、嬉しくて涙腺が緩みそうになる。


だけど、ダメ。絶対に。いまだけは――……ダメだ。


そう強く言い聞かせて、静かに呼吸を整える。

左手の小指を指でなぞりながら言った。


「ごめんね。これから友達と会う予定があるんだ」


「あっ、そうですか。お友達と約束があるんですね」


「本当にごめんね。せっかく誘ってくれたのに」


「いーえ。今度またの機会に、ぜひぜひ!」


「ありがとう」

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