素顔のキスは残業後に
理由はどうであれ――……

言い訳なんてできないし。するつもりもなかった。


向けられる鋭い瞳に胸がズキッ鈍い音を立てる。

けれど、まっすぐ彼の瞳を見据えて声にした。



「ごめんなさい」


私の呟きに柏原さんは僅かに瞳を細める。

変わらない不機嫌な表情で、彼はポツリと漏らした。



「そういえば何日か前に五月が騒いでたな。

『柊司に忘れられない人がいるって、社内で噂になってるよ』って。

桜井の耳に入る前に火消しをしろって言われてたんだけど、もしかしてその噂も信じた?」


「ごめん…なさい」


「別に謝らなくていい。けど、噂に振り回されるとかガキみたいだな」

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