素顔のキスは残業後に
認めるのもすごく悔しいから、

えぇ。思いっきり棒読みで言ってやりましたとも!


そんな私を見透かしたように、彼はニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。

でもふと視線を逸らした彼の瞳に影が射す。
初めて見るそれに胸がギュッと締めつけられる。


何かを迷うように揺れ動く瞳。
彼は一呼吸置いてから意外な言葉を口にした。


「だけどこんな俺でも格好悪いことに。
昔はコンプレックス……のようなものがあったんだよな」

「コンプレックス?」


思わず聞き返してしまう。

知り合ってからの期間は短い。
だけど常に自信を持って仕事をこなしている彼には、一番遠い言葉だと思っていたから。

ものすごく意外だった。


私の想いを見透かしたように
彼は自分の一番近くにいる存在について語り出した。
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