一筋のヒカリ。

憂いの代償

美沙が転校してきてから、約一ヶ月が過ぎた。


美沙もクラスに馴染み、
〝転校生〟としてのラベルも、
近寄りがたい雰囲気も、
いつの間にか無くなっていた。

転校生なんてそんなものだ。

〝新しい人〟転校生、なる異質な存在感は段々と薄れてくる。
その後は、クラスに馴染んでまあまあ楽しくやっていくか、嫌われて苛められるかのどちらかだろう。

美沙の場合は、幸運にも前者だったのだが。


世の中・・・否、この学校、この学年だけでも、後者として過ごさなくてはならない人は、どれ位居るのだろうか。



美沙は、ふと、そんな事を考えていた。




学校。

大して前の学校との違いがあるわけではない。
(変わったのは)
自分の方なのかな、と美沙は思う。

〝虐め〟が恐い。

自分がされるかどうか、ではない。

また、あの時のように、
傷つけるのが、恐い。

加害者になることが、
人を裏切ることが、
誰かを、悲しませることが、
途轍もなく、恐かった。


だから、なのかは分からないが、美沙は人を信じられなくなった。
もちろん、仲良くすることはしているし、
結構人気も有る方だろう。
自分で言うのも何だけど。
いつも一緒にいる友達だって、当然のように居る。

ただ、無意識のうちに、一線を引くようになっていた。

自分と、相手の、間の線。

そこよりも中には、絶対に人を入れなくなった。


喩え、相手がどれだけ自分を信じても。
喩え、自分がどれだけ相手を大切にしていても。


あの時、親友だった少女は、線の内側に、自分に凄く近いところにいた。
当時は、線なんて無かったから。
だからこそ、悲哀が大きくなったのかもしれない。
それも、美沙には分からない。



私には、分からないことが多すぎた。



今、現在、こんな風に、相手を受け入れなくなった理由だって。
分からなかった。
本当に、
本当に、
自分のこと、なのに。
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