【B】姫と王子の秘密な関係




次の日、桜川一丁目店にいったときお父さんの顔色が凄く悪かった。




「お父さん、貧血?
 それとも熱?

 寝てないからだよ。
 私、今日だけだったら一日徹夜してもいいから、ちゃんと休んで。

 仮眠じゃなくて、家でゆっくりと布団に入って眠ってよ。
 お母さんも心配してるから」



そうやって説得を試みるものの、
お父さんは「ここがお父さんの踏ん張りどころなんだ」の一点張りで動こうとしなかった。



そこにタイミングよく巡回がてら顔を覗かせてくれたのは、
久しぶりに顔を見た晃介さん。



「遠野オーナー、顔色悪いですよ。
 お店のことが心配なのはわかりますが、体が資本ですよ。

 お嬢さん一人だと心配だと思いますから、
 俺も今日は、桜川で夜勤に入ります。

 ですから、今日だけでもゆっくり休まれてください」


私の背後から応援で声をかけてくれた晃介さんの言葉に、
お父さんは渋々、店舗を離れることを了承した。



晃介さんはすぐに小川さんに連絡をとって、事情を説明して
桜川に滞在できるようにスケジュールを調整してくれる。



久しぶりに晃介さんと過ごした時間は、
普通の恋人が過ごすような甘い時間にはならなかったけど、
心が不安な今だからこそ、晃介さんの登場は凄く心強かった。



相変わらず、苦手意識の強い江島さんは
私には攻撃的な態度で、接客マナーもいまいち。

この店舗の問題児。


そんな江島さんのフォローをしながら、
店舗シフトに入って三時間が過ぎた頃、店内の電話が鳴り響いた。



時刻は19時45分。




「有難うございます。
 フレンドキッチン桜川1丁目店、お電話担当遠野でございます」


何時もの決まり文句で電話に出る。

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