【B】姫と王子の秘密な関係



「盗んだ5日分の売上金、500万円はどうなりましたか?」

「全額、里岡が持っています」

「わかりました。
 俺が付き添います。

 持田店長、遠野オーナーに謝罪すると共に
 警察に出頭して頂けますか?」


静かに諭すように声をかけると、
持田店長は、崩れ落ちる落ちながら涙を流し静かに頷いた。


出頭させる前に、まだ集中治療室で治療を受ける遠野オーナーの代わりに
奥さんである遠野店長に時間を作って貰えるように、音羽さん経由で頼む。

何も事情を知らないまま、
待ち合わせ場所に足を運んでくれた、オーナー夫人に
持田店長は何度も謝罪した。



「持田さん、貴方の事情もわかりました。

 だけど、今の私には貴方の犯罪を許すことは出来ません。
 罪を償って、やり直してください」



オーナー夫人は、気丈にそう振舞うと
その場所から姿を消してしまう。

持田店長をその場において、オーナー夫人を追いかけると
壁にもたれるように崩れ落ちて、涙を流してた。



「遠野店長。
 今日はいきなりすいませんでした」

「高崎さん、私こそごめんなさい。
 主人が入院中だからこそ、私がしっかりしないといけないのに。

 高崎さんのお仕事を邪魔するようなことをして」

「邪魔だなんてとんなでもないです。
 
 俺は今、俺がやりたいことをしてるだけです。

 今は本部の高崎晃介としてでなく、
 音羽さんの恋人、高崎晃介として役立たせてください」



そう……遠野家族の一件が絡むと、
俺の感情は必要以上に、コントロールがきかなくなってしまう。



「有難う。

 高崎さん、本当に音羽のことを思ってくださってたのね」


そうやって微笑んだ遠野店長は、
音羽さんの母親として、嬉しそうに微笑んでくれた。


「タクシー手配しますので、そちらで病院に戻ってください。
 俺は、持田店長と共に警察に向かいます」



その後、二台手配したタクシーのうち、
一台には遠野店長を乗せて多久馬総合病院に向かって貰えるように頼んだ。

そしてもう一台は、桜川警察署。


車内に沈黙が続く中、
タクシーは桜川警察署へと到着する。


持田店長は、しっかりとした足取りで警察署内に入っていくと、
自分の言葉で出頭してきた旨を告げた。



俺はその後を一緒についていって、
事件担当の責任者に、フレンドキッチンの本部で研修中であること、
春から経営者として名前を連なっている、早谷晃介と名を告げたうえで
早谷の警備部が揃えた資料を全て、警察へと手渡した。





あれほどに毛嫌いしていた早谷の名前も、
こういう時には、有効で、一瞬のうちの警察関係者の態度が変わり
署長クラスまでが、同席する大事となった。



「早谷晃介様、フレンドキッチン桜川一丁目店での事件に関しましては、
 犯人逮捕まで徹底的にするようにと、上のものより申し付かっております。

 早谷の会長、社長経由、警備部の最高責任者よりも話があったようです。

 桜川市長の御子息には、我々もこれまで手を焼いてまいりました。
 これを気に、過去の罪も含めて洗いざらい検挙させていきたいと思っております」

「その資料に名を連ねる、遠野覚オーナー。遠野恵美オーナー夫人。
 
 そして、里岡の暴漢の被害者になりかけた彼女、遠野音羽さんは俺にとって
 関係深い存在です。

 遠野家族を調書する際は、俺を通していただけると幸いです」

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