【B】姫と王子の秘密な関係





更に資料に目を通すと、
高校生二人の、家族背景などを記された項目が視界に入る。



里岡 充。
父親は、現在の桜川市の市長。

現役の市長の息子がしでかした盗難事件。




江崎 菜々美。

父親と、6つ年上の兄共に
一族の経営する早谷グルーブの社員と言うことも明らかになった。

兄さんは、家族の素行の面から
父親と兄の二人を呼び寄せて、警備部として話を進めると言う。


自主退職、
もしくは左遷と言ったところか。







高校生二人共に、痛いしっぺ返しだな。




苦笑気味に笑うと、
俺は兄さんから受け取ったファイルを鞄にしまって
早谷の警備部を後にした。




向かうのは、桜川1丁目店。


本部スタッフに、事務所で持田店長とのみ話し合いたい旨を告げて
事務所に二人きりで入る。





用意された椅子の前、
真っ青な表情で入ってきた持田店長は、
観念したように「ばれてしまったんですね」っと小さく呟いた。




「持田店長、今回の盗難事件の全貌が明らかになりました。

 首謀者は高校生の、里岡くん。
 桜川市の市長の長男。

 そしてもう一人は、江崎菜々美スタッフ。

 江崎さんを店舗スタッフとして採用したのも、
 持田店長、貴方でしたね。

 試し雇用期間の2週間が過ぎても、
 貴方は江崎さんの契約を打ち切らず本採用している。

 お世辞にも江崎さんは、仕事が出来るとは言い切れませんね。

 江崎さんを採用した時には、
 すでにこの犯行が決まっていたのではありませんか?

 持田店長は、今年3か月だけですが梁田オーナーの元で
 里岡君を採用していたこともある」

「里岡は確かに半年前、私が梁田オーナーの時代に採用しました。
 高校三年生と言うこともあり、社会勉強がしたいと言うのが彼の志望動機でした。

 服装チェックは、何度注意してもだらしなかったですが
 頭の回転だけは速くて、接客態度以外は仕事を覚えるのが早かった。

 それ故に、試し期間以降も正式雇用をしました。

 梁田オーナーが他界されて、里岡君が事実上のクビになった時から
 彼の私に対する嫌がらせが始まりました。

 高校生の仲間を集めた、狩と称される集団暴行。

 そのターゲットの一人になってしまった私は、警察に被害届を出しましたが
 警察は彼が市長の息子さんと言うこともあり、何も動いてはくれませんでした。

 その後は、里岡の言いなりになるしかありませんでした。
 里岡に反抗するという行為は、私自身の死の恐怖と常に隣り合わせだったんです。

 多分、もうご存知とは思いますが、私の父には借金があります。

 その借金を少しでも早く返済したくて裏の世界に踏み入れました。
 その場所は、援助交際を取り仕切る闇企業。

 江崎はその日、円光(援助交際の隠語)するために約束の場所に現れたものの
 突然拒否。

 怒った登録客をいさめる為に、駆けつけたのが出会い。

 それ以来、俺の裏稼業をばらすと、脅迫されていました」



高校生二人から脅迫されてしまった、
持田店長は、どうすることも出来なくて
犯行に協力したということだった。

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