【B】姫と王子の秘密な関係



波風を立てることなく、
相手を貶めることなく対応出来ることを
スマートな対応、大人な対応などとと言うこともあるけれど、
今回の行動が、それに価するのかすら俺にはわからない。



今の俺が「高崎」の姓を名乗っているから、
他の目が気になって、
言葉にすることが出来なかったなんてことにはなってないだろうか? 



その時、一瞬でも『早谷』の名字に縋りたいと思ってしまった
その心を打ち消すことなど出来ない。



今の俺が、高崎晃介ではなく、早谷晃介と名乗っていたら
『早谷』と言うそのステータスが、俺が告げる素直な評価を
生意気なガキのくだらない評価ではなく、
後継者としての正当な評価へと、瞬く間に変えてしまうような気がして。




そんな風に思わずにいられない、
俺自身が一番「早谷」と言う姓に振り回されているんだ。



「そうか。

 高崎君、ここでの研修が君にとって有意義なものになるように
 引き続き頑張りなさい」

「有難うございます。
 失礼します」



そのままコーヒーを配り終えて、
俺は自分のデスクへと戻って、ノーパソを開く。



ノーパソの中には、
小川さんとまわっている店舗の様々な情報が詰まっていて
その全ては、俺自身が情報解析して、
今後の改善点などを書き記しているもの。



ひとえにコンビニと言っても、
立地条件によって、様々なものが変化を見せていく。



オフィス街の店舗。
工業地帯の店舗。
住宅街の店舗。


その周辺にスーパーがあるかどうか。

大通りに面しているか否か。
近くに学校はあるか否か。




そう言った情報から、
予測できる客層。


客層が変わってくると、
当然仕入れる商品も変わってくる。



だけど……本部側から、店舗経営者に求めるのは
同じような商品ばかり。



高齢層のお客様が多いところに、
カロリーの高い脂っこいお弁当をどれだけ仕入れも
売れるわけがない。


そんな風に、客層から見えてくる現在の現状を
資料を見ながら分析して、将来を見据えていく。




次々と資料に目を通していると、
コーヒーカップを下げに来た、逢野さんが覗き込む。

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