【B】姫と王子の秘密な関係

売上データーを確認することはあっても、
それを生かしきれてなかったのかな。


計算式と一緒に、原価奉仕と言うことを考えて多めに発注するとしても
今のままだと営業さんが注した数は、うちの今の店の売り上げの4か月分の在庫になってる。



その商品の為に、一時的にフェイスを増やしても、回転率が悪くなるのも必須。
ゴンドラに新鮮さがかけてしまうから、なんとしても阻止したい。



そんな結論を二人で弾きだした頃には、
お客様の接客の傍ら、30分以上が経過していた。



今回の原価奉仕対象ドリンク10点。


全ての現状を書き出して、同じように私たちが考える適正在庫を書き出して、
赤ペンでその数字を囲んだ。




退治できた後は、ちょっとした達成感に包まれる。




「お疲れ様です。
 音羽さん、檜野さん」



時間が私たちのあがりの、21時近くになった頃
高崎さんが姿を見せた。


「お疲れ様です、高崎さん」
「お疲れ様です」



和羽と二人、挨拶をすると彼は
事務所に荷物だけを置いて、制服に袖を通すと
レジカウンターの中に入ってきた。



「えっ、高崎さん?」


驚く和羽に、何も言えずに固まる私。



レジカウンターの中に入って来た時の、
さり気ない立ち居振る舞いが、
何故かアキラさんとシンクロしてしまったから。



「音羽?
 どうしたの?」



和羽に心配そうに見つめられるものの、
私は無言で首を横に振った。



「突然で音羽さんにはびっくりさせてしまったんだよね。

 時間帯も時間だから。

 本当はもう少し早く来られたら良かったんだけど、
 俺の時間が作れなくて、遅くなりました。

 檜野さんは、ストアサブマネージャー受験してくれるんだったよね」


「はいっ。
 受験します」

「有難う。
 音羽さんの心は定まりましたか?」



柔らかい口調で問われる言葉。



「はい。

 まだお店の後継者としてたつかどうかまでは決められませんが、
 受験はしようと思います」



問われた言葉に、私は一言一言を大切にしながらゆっくり告げた。

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