【B】姫と王子の秘密な関係



そんな初日の実技試験をクリアした後は、
恐怖の筆記試験。


試験範囲は、通常のスタッフマニュアルから、経営者側が必読の経営マニュアル。



私がコンビニのバイトを始めた頃の、ファイリングでの厚みにして15センチくらいのずっしりとした重さの
マニュアル、7冊分。


時代によって、多少の変更修正があるものの
今はその15センチの厚み×7冊分の内容が、ストアコンピューターの中に詰まってる。


店内から持ち出し禁止のそれは、コピーすることも許されないため
勤務時間外に、必死に事務所に通い詰めて頭に叩き込まないといけない。






いつもの様に和羽と一緒にシフトに入っている私たちは、
その日から受験に向けて、今まで以上に神経を張り巡らせてワークに入る。


時にお互いの勤務態度で気が付いたことを、
指摘しあいながら。






「和羽、今発注終わったよ。

 営業さんの仮発注数字なんだけど、今マニュアルの計算式と格闘してるんだけど
 どうみても原価奉仕ってことを差し引いても多いような気がしない?

 ただ闇雲に反対するだけじゃなくて、
 試験だと思って、計算式と資料を添付して、私たちが発注したい数を割り出してみようよ」




お互いの仕事を終えた後、
レジカウンターに戻ってきた私は、和羽と一緒に端末を覗き込みながら
過去の売上データーを呼び出していく。



メモ帳に、過去のデーターを書きとめる。





えっと計算式によると、発注は発注時期が固定されている定期発注点方式と、
発注時期が決まらず、常に一定の量をなくなった時に発注する定量発注点方式とに分かれる。


今回の場合は、週5で納品が決定しているドリンクが対象商品だから
定期発注点方式の計算式が有効。


発注量=(発注間隔+調達期間)x販売予想+安全在庫-現在の在庫量-現在の発注残。




過去のデーターから理論的に突き詰めて考えて、
発注数を弾き出したのはある意味初めてかもしれない。

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