スタートライン~私と先生と彼~【完結】

想い


何十年ぶりかの寒い冬が過ぎ、春が来た。

俺はまだ気持ちを伝えていない。

でも恋人同士のようによく会っている。

卒業してから、無理して笑っている時があったが、最近は無理して笑わなくなった。

もうあいつのこと忘れることができたんかな?

そろそろ気持ちを伝えてもいいかな?

でもこの楽しい生活も捨てたくはない。

それとは逆に、膨らみに膨らんだ俺の気持ちは限界となっていた。

今日も夕飯を一緒に食べた後、さっちゃんを家まで送るために、並んで歩いている時に、くだらない質問をしてしまった。


「理工学部って、男が多いんやろ?」

なんてアホな質問なんやろう。いまさら何を聞いてるんだ俺は。

「そうやな・・・9割が男の子かな?」


9割か・・・実際に割合を聞くとやっぱり衝撃的だ。

さっちゃんの周りに9人の男がいる計算になる。

「・・・・・心配やな〜」


つい口に出してしまったが、本心だから、しかたない。

やっとあいつがいなくなった途端、男だらけの中に入るのが不安でしかたなかった。


「何が心配なん?」


さっちゃん・・・?

これってわざと聞いてる?

俺は、意地悪な笑顔を零しているさっちゃんを見てそう感じた。


「えっ?何がって・・・・」

俺はもう自分の気持ちをごまかしきれなくなっていた。


「だって・・・さっちゃんを取られたら嫌やから」

言ってしまった。

「取られるって、私は隆の物じゃないよ〜」


さっちゃんは俺の顔を覗き込む。

わかってるでしょ?俺の気持ち。

少しの沈黙の後、俺は決意した。


言うぞ!


「さっちゃん、言うよ・・・」


俺は、静かに言い放つと、さっちゃんも真剣な眼差しになっていた。


「うん」


さっちゃんは俺が今から言うことがわかっているようだ。


「さっちゃん、ずっと好きでした。付き合って下さい」


俺は、ゆっくりとこれまでの気持ちを込めて、ようやく告白することができた。


返事は・・・?


この待っている数秒間は、何分にも感じられた。


< 291 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop