スタートライン~私と先生と彼~【完結】
大学の卒業式も終わり、4年間過ごしたこのアパートともお別れだ。
俺が就職した会社は、実家からも通えるが、会社の近くでアパートを借りることにした。
沙知も実家へ戻った。
歩いて5分の距離から、電車で1時間の距離となってしまった。
離れるのは距離だけにしていただきたい。
俺は沙知より一足先に入社式を迎えた。
「来週から1ヶ月、東京へ研修やって」
「1ヶ月も?」
めちゃくちゃ不安や。
俺が東京から帰って来たら、俺の居場所はないんじゃないか?
「寂しい?」
「寂しいよ・・・」
俺はさっちゃんを抱きしめた。
寂しさを打ち消すように抱き合った。
それでも埋まらない距離があるような気がした。