スタートライン~私と先生と彼~【完結】


今夜はもう電話しないでおこうと思ったが、知らず知らずのうちに携帯に手を伸ばしていた。繋がったことに安心した。


「へ〜、そんなに課題があるんやね」


俺らはいつものように話しをしていた。

なにやってるんだか・・・。

心なしかさっちゃんの声に元気がない。


初出勤で疲れたのかな?

・・・俺が聞きたいのはあいつとの関係なんやけど。

俺には、もう失うものなんてない。


「さっちゃん、ところで先生とはどうなった?」


付き合うことになった、とかいう話は、聞きたくなかったが、聞かずにはいれなかった。


さっちゃんは4年振りに先生に会い、食事に誘われたらしい。


そして、告白されたらしい。


「よかったやん。やっと告白してもらえたんやね」


何が「よかったやん」やねん!!自分で言って腹が立った。


『・・・隆は本当によかったなんて思ってるん?』

さっちゃんから意外な言葉が発せられた。


「思ってるよ。だって、さっちゃんは4年間待っていたんやろ?」


嘘や。

『よかった』なんて微塵も思ってないよ。

悔しい。


4年振りに会った男にあっさり奪われるなんて考えても腹が立つ。


『4年間・・・。じゃあ、私が隆と付き合ってた3年間は何やったんよ!!隆も私がお情けで付き合ってたって言うの?』


お情けで付き合ってたなんて思ってないよ。

沙知、君はなんで怒ってるの?

君は先生と幸せになったらいいんやで。

俺のことなんて気にしないで・・・いいんやから。


『お情けで3年も付き合えるか!!もう知らん!!』



電話を切られた。

言うだけ言って切られた電話が悲しかった。


そして、気付いた。


俺は、自分の気持ちに嘘をついて、さっちゃんの気持ちさえも無視して、先生とくっつけようとした。


最低だ・・・。


お願い、もう一度、電話に出て。


お願いだから・・・。

このまま終わりたくないよ。


大好きやで、沙知。


その後、何度も電話やメールをしたが、出てくれない。




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