スタートライン~私と先生と彼~【完結】

卒業


伝えられることのない想いを胸に、卒業式を迎えた。

まだ卒業したくないといった雰囲気が漂う体育館で、式は淡々と進められた。

お決まりの『蛍の光』も、涙が邪魔をして歌えない生徒も多くいた。

俺はそんな生徒たちの姿を冷静に見ていた。

それは、まるで俺一人だけが、取り残されているかのようだった。


彼女・・・原田も涙を流していた。


俺は目が合わないように、わざと彼女を視界から外していた。



教室に戻ってからも


『まだ離れたくない』

『まだここで過ごしたい』


といった声が聞こえそうな雰囲気。


でも誰かが言うと、涙が止まらなくなるから、言わない。


「卒業は別れではなくスタートだ。君らはこれからの人生でつまずく事もたくさんあると思う。でも、ここで学んだこと、一緒に過ごした友達がきっと支えになってくれるだろう。つまずいた時は遠慮せずにここに戻ってきたらいい。ここは君らの家だからな」


川田先生の最後の言葉で、みんな我慢していたものが溢れ出た。


俺は、自分が卒業した時の事を思い出した。

あの時も、川田先生の言葉でみんな泣き崩れたんだ。


川田先生の言葉は、きっとみんなの心に響き続けるだろう。


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