♀ my prince ♂



―11月上旬。


いよいよ学園祭当日。

玲央くんとは朝は(お部屋で)当然会えたけど…学校に着くと、すぐに実行委員らしき人たちにどこかへ連れて行かれてしまった。




何で楽しいはずの学園祭で…


大好きな人に一回も会えないのか分からない…。
こんなの…ますます不安になるじゃんか…っっ



玲央くん…会いたいよ…。どこにいるの…?




私は自分の当番が終わるまで上の空。
言われていた業務をマニュアル通りこなすだけだった。




「…未亜ちゃん、行こっ!」



「え…っ」


そんな時間をすごしていた中、急に夏凛ちゃんに手を掴まれ急ぎ足で歩き出した。
その時やっと…自分の当番が終わり玲央くんに会えるんだと実感し始める。




玲央くん…早く会いたいよ…。


こんなにも“会いたい”なんて思うの…玲央くんが初めて…。




「……やっと着いた。」



「ぁ…玲央くん…」


その夏凛ちゃんの言葉で会場(体育館)に辿り着いたのだと分かる。
ステージを見上げてみると…中央には玲央くんと女の子が立っていた。



「未亜ちゃん…優勝してるよ、あいつ。」



「ぇ…やっぱりそうなんだ…」




玲央くん…優勝しちゃったんだ…。想像してたのと同じ…。




『―…では。優勝したお二人には…キスをして頂きます!』


ボーッとステージ上の彼を見ていた時、司会者がそんなことを口走った。



「ぇ……!?」



「「おぉ~!!」」


私の心とは裏腹に…司会者の言葉に会場中は大盛り上がりを見せる。




な…何それ…。


玲央くんが他の女の子とキスする姿なんて…
そんなの見たくない…見たくなんかない…っ



嫌だ…絶対嫌だよ…っっ




「っ…」


その瞬間…私の目からは涙が零れ落ちた。



「…前行こ!そんなの絶対ヤダもんっ!!」


私の姿を見た夏凛ちゃんは私の腕を引っ張って歩き出す。
たくさんの人の間をかき分けながら、どんどんと前に―。





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