Sweet Mother's Day


佑くんとはできちゃった結婚だ。

当時、彼はまだ二十歳。
調理の専門学校を卒業間近で、就職先の洋食屋さんは決まっていたけれど、決して胸を張って結婚を決めれるような時期じゃなかった。

私はその頃から今の会社で経理事務をしていて、キャリアはすでに丸4年を過ぎていた。

出会いは合コン。付き合った期間は大体一年。
避妊はしていたつもりだったけれど、酔って曖昧になった日も確かにあった。

生理が来ないことを理由に妊娠を疑って、ドラッグストアで買った検査薬で調べると結果は陽性。

典型的なうっかり妊娠に、少し笑えてかなり泣けた。
彼に結婚なんて望めないって思っていたからだ。

「……別れる?」

悩ませないようにと最初にこれを聞いた。

佑くんはこれからの人だ。
修行をして一人前のコックになるまで、結婚なんて考えることも出来ないだろう。
私やお腹の子供は、重荷以外の何物でもないはずだ。

でも、彼は首を横に振った。

「子供がいるなら結婚しよう。……子供が居なくても、俺はいつか麻由と結婚したいって思ってた。時期がちょっと早くなっただけだよ。生まれてくる子供と、麻由のお父さんにさせてくれないか」

「佑くん」

『……その言い方だと、私のお父さんにもなっちゃうじゃないの』と突っ込みたいところだったけど、嬉し涙が先にこぼれて言えなかった。
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