ここでキスして。



………………



放課後、伊織ちゃんがニヤニヤしながら私の席までやって来た。





「みーやー」

「ど、どしたの伊織ちゃん…」




思わず一歩後ずさると、伊織ちゃんは構わずグイッと顔を近付けてきた。





「眠り王子と何話してたの?」

「へ?」

「数学の時間!あんたたちずっとコソコソしてたでしょ」

「…してない、してないよ!」





ていうか、なんでそんな笑顔なの伊織ちゃん!

なんか面白いもの見つけたって目をしてる。




「へー?そのわりには女の子の顔になってたけどー?」

「なにそれ、どんな顔?!」




自分の頬を両手で挟む。
女の子の顔ってどういうことだろう。

榛名くんの笑った顔がかわいくて鼻血は出そうになったけど…!
距離が近くてドキドキはしたけど!



でもそれは男の人に免疫がないからであって、そういうのじゃない。






「なるほどね。美弥にもついに春がきたってことか」

「ち、違うよ!!」




そういうのじゃない。はず。






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