レヴィオルストーリー

38.魔王






空間の歪みに一瞬だけ吸い込まれる。



そして、アレンはすぐに外へ出た。



真っ黒な床にトン、と軽く足をつける。


顔をあげると、不気味に光る赤い瞳と目が合った。




〈…ようこそ、予言の剣士アレン=ブロドニス〉



低い声が部屋いっぱいに響く。


アレンは無言でそれを睨んだ。



黒いマント、黒いフード。
床までつきそうな黒い髪。
唯一赤い、血のような瞳。



間違いなく、8年前に見た人物。




「…魔王、久しぶりだな」


〈やはりお前だったか。ナティアと42代目の子供…〉


ジロジロとアレンを眺める魔王は、座った黒い王座から立ち上がらない。




「そのまま戦うつもりか?」

〈これで十分だ〉



その言葉にアレンはまた無表情に魔王を睨んだ。



(何だこの余裕…。俺がそんなに弱いとでも思ってんのか)


胸がムカムカする。

憎しみがどんどん沸き上がる。




───それを止めたのは、脳裏に浮かんだあの三人。



(…わかってるよ)



憎しみなんて感情を持って、闇の塊の魔王に勝てるわけがない。


アレンの碧の瞳が、鋭くキラリと輝いた。


〈ほほぅ。もう前みたいな暴走は望めないようだな〉

魔王のその言葉と共に、空までもが暗い窓の外を青白い稲妻が走った。



それと同時にアレンは地面を蹴る。



< 338 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop