めぐりあわせ





部屋の前に来て、岳は鍵を回し、ドアを開けた。



「私、帰るね」



「…」



すると岳は、私の手を掴んだ。



「もう少し一緒にいてくれる?」



「でも…」



心臓が飛び出しそうなほど、ドキドキしてる。




「…う、うん」



手首を掴んでいた手が、優しく手を繋いでくれた。



「岳…ブーツが脱げないよ…」



「…あ…ごめん」


すぐに手が離れていって、岳は先に部屋入って行った。



「おじゃします」



玄関を上がると短い廊下があり、ドアを開けた。



対面式のキッチンとリビングダイニングになっていて、ソファとテーブル、テレビがあった。



岳は、そのソファに崩れるように座った。



「体温計とかある?」



「…あぁ…そこの引き出しに…」



「あっ!あった!」



「…」



「はい。測って」



「…うん」



「風邪薬とかスポーツドリンクとか冷却ジェルシートとかあるかな?」



「…ないかも…」



ピピピッ ピピピッ ピピピッ



「鳴ったね。見せて」



岳から体温計を預かる。



「39.5度…高いね」



「そんなにあるのか…」



「私の家に冷却ジェルシートとか風邪薬とかあるから持って来るね」



「ああ…ごめんな…ありがとう」



「その間に着替えて、ベッドで寝ててね。いける?」



「あぁ…」



「鍵借りていっていいかな?」



「うん。これ…ごめんな…」



私は、岳に鍵を借りて、部屋を出た。




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