呉服屋の若旦那に恋しました


ばたんと扉が閉まり、私はアトリエにひとりぼっちになった。

残されたのは思い出のかけらたち。

私は、1枚1枚懐かしんで、丁寧にアルバムにしまっていった。


「お母さん美人……」


なぜ私はお父さんに似てしまったのだろう……。

私は遺伝子を心の底から憎んだ。


「あ」


お母さんが私を抱っこしている写真のしたに、志貴が私を抱っこしている写真を見つけた。

赤ちゃんの私を抱っこしている志貴…。

その写真を見て、私はなんだか不思議な気持ちになった。

生まれた時の記憶なんてもちろん無い。でもここに、生まれたての私を抱いている志貴がいる。ここに時が刻まれている。

写真を捲るごとに私は大きくなり、歩けるようにまでなっていた。

藍ちゃんはこの頃は今よりもずっと明るい表情をしている。

幼い頃の自分を見るのは、自分の知らない過去を見るのは、なんだかわくわくする。


「志貴かわいい……」


小学生の志貴は、目がくりくりしてて、今より少し丸顔ですごくかわいかった。

小学生の志貴と手を繋いでいるちっちゃな私。

志貴と写っている時は、私は必ず志貴と手をつないでいた。


「………」

< 101 / 221 >

この作品をシェア

pagetop