呉服屋の若旦那に恋しました
「好きです……本当に。私、今まで沢山の男性に出会ってきましたが、自分から近づきたいと思ったの、初めてなんです。本当…なんです。私、少し男性恐怖症な所があったんですけど、志貴さんは初めて会った時から何故か安心感がありました」
「……」
「面白くて、気取ってなくて、優しくて……。結婚するなら、こういう男性がいいと、思いました。本当に」
「美鈴さん…、え、待ってください、泣いてるんですか……? えっ、大丈夫ですか?!」
「すみませ……気持ちが昂っちゃって…。こんなの初めてなんです」
「いや、えっと……」
「志貴さん……」
――――女のジェラシーは醜い。
束縛の強い友人の話を聞いて、そんなので嫉妬する? と笑い話にしていた私だけど、ちゃんと自分にも立派な『嫉妬』という機能が備わっていることに気付いた。
美鈴さんが、志貴の腰に手を回して、ぎゅっと抱き着いている姿を見た瞬間、胸の中で熱い何かが燃え上がったのを感じた。
そして、彼女の顔が志貴の顔に近づく直前で、私は目をそむけた。
私は、彼女でも奥さんでもないのに。
志貴の、ただの幼馴染なのに。
今、“私の志貴に触らないで”って、思った。
なんて醜いんだ、私は。
志貴の気持ちを確かめる勇気も、自分の気持ちと向き合う勇気も持ちあわせていないくせに、一丁前に嫉妬だけはしてる。
やっぱり私はどこかで、志貴は私のことが好きだという自信があったんじゃないだろうか。
一度も好きと言われたことはないくせに。
ちゃんと自分の気持ちを伝えて、行動に移している美鈴さんの方が、私よりずっと誠実だ。
私は、志貴の優しさにずっと甘えて、怖いことからは逃げている。
それなのに、今、志貴を取らないでって、心の中で叫んでる。
「もう、やだ……っ」