ラブレター2

ミッシングユー

小学校、中学校、高校。

僕が見てきたあいは、バスケットをしていた。

僕は、一つ年上のあいを、ただ見つめるだけの存在。

好き。とか、そんな感情は無かった。

憧れ。や、見ているだけで、幸せ。みたいな感情だった。

小学校の時は、話しをする、きっかけさえ無かった。

中学校では、たった一度だけ話した事があった。

一年生と二・三年生を結ぶ、旧校舎と新校舎の渡り廊下で、

「寝癖、凄いね?」

と、笑いながら話しかけられたことがあった。

「僕のこと、覚えててくれたんですか?」

その、たった一度だけ。

その時は、恋愛経験も無く、ただ素直に嬉しさを表現でき、笑いながら話しができた。

そんな、ある日、僕が部活をしている最中、隣りでバスケットをしていたあいが、倒れた。

ざわめく体育館の中、何事も無かったかのようにしていた僕の心は、誰よりも心配の色で染まっていた。

高校生になり、放課後、入るか迷っていた部活を覗くために、立ち寄った体育館で、あいの姿を見た。

あいの後輩から、聞いていた高校は、自分が通うことになった高校とは違う所を聞いていたので、少し驚いた。

猫背で口を、ポカン。と開けていた僕に気付いたのか、あいは、あっ。と笑いながら、体育館の入り口に近付いてきた。

「あれ?何で、ここにいるの?」

「いやいや、何であいさんがここにいるの?」

話しが噛み合わず笑っていると、あいの先輩達が集まり出して、同じ中学校だ。と、僕を紹介してくれた。

この時も、ただの偶然が、運命。とか深い感情は無く、普通に好きな先輩だった。

ただ、初めてと言えるくらい間近で見たから、可愛くなったなぁ。とかの感情は、あったと思う。

きっと、高校生なんだし、彼氏でもいるんだろうな。と思っていたら、次の日くらいに同じ年の女の子に、

「あいさん、彼氏いるんだって。」

と聞いた時は、素直に、そうなんだ。なんて普通に思ったりした。

だから、本当に普通に、あいの後輩のバスケット部の子と、僕は付き合った。

放課後、毎日暇だったし、彼女を見るために、体育館へ行くことが多かった。

たまに、僕の方へ転がってくるバスケットボールを、忙しそうに拾いに来るあいが、

「ありがとう。」

と言う言葉に、また転がってこないかな。と思ったりもしていた。
< 13 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop