ラブレター2
寒さに耐えきれず、僕は目が覚めてしまった。

エンジンを付けっぱなしだと、ガソリンを食われてしまう。

だから、暖房なんて付いてやしない。

マジ、この寒さ無理。と思ったが、隣りで寝ているあいも寒いのだろう、眉間に皺を寄せている。

それを見てしまったら…ねっ。

僕はくすぐられるのが弱点だけど、あいにも弱い。

ジャケットを脱いで、あいの上に被せる。

ホントに、その行動は意味あるのか、どうかも分からないくらいの寒さだった。

あい~。起きてくれ~。

この車の持ち主はあい。

コンコン。

窓が叩かれている?

コンコン。

それに伴(ともな)い、あいが目を覚ます。

コンコン。

窓は雪で覆われ、外は見えない。

「警察?」

「えー。嫌だぁ。」

二人して小声になり、ノックが消えるのを待つ。

コンコン。

なかなか、消えてはくれない。

「窓、開けよう?」

運転席からノックされているため、あいが仕方無くドアを開ける。

ボタン一つで、ドアが半分だけ下がる。

「すいません。」

そこには、怪しいおばさんが一人立っていた。

窓を開けたため、冷たい風と雪が、僕らを襲う。

あいに、何かあったら。と思い、ドアを閉めるように促(うなが)す。

「でも…。」

優しいあいだから、面倒臭い。と思いながらも、僕が寒い外に出る。

「ってか、何ですか?」

おはさんは言う。

「手伝ってくれませんか?」

「何を?」

「こっちに来てください。」

外は、猛吹雪になっていて、トレーナーだけの僕は、ジーパンのポケットに手を入れた。

「何か分かんないけど、ちょっと行ってくる。暖かくしとけ。」

うん。と、寒そうな目をした、あいが頷く。

先程のおばさんに近付き、やっと理解できた。

「これを、袋に入れて。」

ピンクの雨合羽を着ているおばさんの手に、沢山の新聞があった。

意味も分からず、それを見よう見真似で、袋に詰める。

新年の新聞は豪勢だな。なんて、思う余裕すら、この寒さには敵わない。

無器用に、三枚目を入れた時、

「良い人は、いるもんだ。」

と言われたが、

「でも、早くしてね。」

「…………。」

淡々と話す、おばさん。

それに由(よ)ると、おばさんは、寝坊したらしく、時間が間に合わないらしい。

「じゃ、配達してくるから、全部入れてて。」

そう言って、新聞を乗せたバイクは、何処かに消えて行った。

やってられねぇ。
< 51 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop