ラブレター2
また、チョコレートの季節がやって来た。

「何もいらない。」

会いたい。と、言葉にできたら良いのに。

「なら、会おう?」

笑顔が似合う、天使の微笑みが、僕に伝染する。

「まぁ、夜なら、時間くらい空けておくよ。」

車を降り、僕の家の前で、バイバイ。をした後に、自分の部屋で、考え事をする。

最近、いろいろあったけれど、誕生日プレゼントだ。って言って、あいがくれた、名前を思い出せない、CD入れを見つめながら。

お揃いのキーホルダーも、そうだけれど、お前達は、よく笑っているなぁ。

それを見ていると、鼻で笑ったりしている自分に気付く。

寒さに震える手で、充電中の携帯を握り締めて。

『ってか、やっぱり、会わなくていいよ。』

もう、好きの限界を越えていたけれど、また、傷付けることが怖かった。

『え~。会いたい。』

どれだけ好かれているのか、分かっている。

ただ、あいへ、好きだよ。なんて、肝心な時に言えないから、キスやエッチをしたりするのかもしれない。

そのせいで、傷付けたけれど、大好きな人となら、乗り越えれると思ってる。

越えていけるんだよね?

サヨナラ。と、大好き。が、いつも頭の中でグルグル回ってた。

「俺は、いつでもチョコレートをお待ちしておりまーす!!」

教室の中で、小さな笑いが目に見える。

僕の馬鹿友達が、両手を広げ、今日をアピールしている。

しかし、誰もそれを本気にはせず、いつもの雰囲気が、また流れた。

「クソ!!バレンタインなんて日はいらねー!!」

誰に怒っているのかも分からないコイツは、少し前、一緒にピアスを買いに付いて来てくれた奴。

「まぁまぁ。」

笑いながら、そいつを慰めるが、何故か怒られた。

「お前はいいよ。必ず貰えるんだから。」

「まぁまぁ。」

あっち行け。と言われたが、君の前の席では、何処にも行けないよ。

「はい、あげる~。」

よく知っている女の子が、コイツに何かをあげようとしている。

「おっ、ついに貰えたじゃん!!」

コイツが苦笑してから、

「ゆうの彼女のなんていらねー!!本命が欲しいのに!!」

泣き真似なんかして、大袈裟に演技する高校生。

「なら、あげない。」

僕の彼女が、そう言うと、

「仕方ないから、貰ってやる。」

馬鹿だけれど、可愛い僕のお友達。

僕は、彼女からは百円くらいの、板チョコを貰った。

年々、投げやりになって来たのは気のせいだろうか?

チョコレート。

実は僕は苦手。

小学生の時、いっぱい貰ってしまい、友達の分も合わせ『ゲーム』をして以来からだ。

ジャンケンで負けた奴が、一つ分を食べる。と言うシンプルなゲーム。

初めは、楽しく食べていたのだが、途中からチョコレートだけだと、体に拒否反応が出てくる。

「無理。」

「ダメ~!!」

結局、それの繰り返しで、五時間くらい経っていたかな。

子供とは残酷で、女の子よりも、男は無神経で、鈍感。

友達の『本命』のチョコレートを具合い悪くなりながら、嫌々で食べるのだから。

手紙らしき物も、破ったりするのだから。

僕は子供で分からなかったが、ゴリラ?ゴジラ?みたいな、当時、少し有名だったチョコレートを貰っていたことも知らず、苦い。と言いながら食べていた。

当然、母親から、残しててくれても良かったのに。と言われたことは、言わないでおく。

次の日、チョコレートゲームをした奴らが、学校を休んだことも伏せておく。

本当に、鼻血が止まらないのだから。

「いらっしゃいませ。」

こんな日に、バイトかよ。なんて思いながら、レジを打つ。

「今日は、特別な日ですよ?」

と、何がいい?に対し、ホワイトチョコ。と、常連の若い女の人達に言うと、笑いながら、皆チョコレートをくれた。

名前も知らないのに。

お客さんの優しさに、凄く癒されていた。

六歳くらい離れた、バイトの従業員のお姉さんにも貰った。

『終わったよ~。』

あいにメールを送って、着替えた後に、コンビニで時間を潰す。

見慣れた車が入ってきて、寒い外へ出てから、その車に乗り込んだ。

「今日、お客さんに、チョコ貰ったよ。」

そう言いながら、助手席で、それを食べる。

ホワイトチョコは、大好きだった。

その日、あいに別れを告げようと思っていた。

けれど、なかなか切り出せず、

「帰る。」

頭の中を、僕は整理できないでいた。

「何で怒るの?」

泣きそうな顔で、あいが訴える。

違う。これ以上幸せになって、また、あいを傷付けるのが怖いから。

「ごめん、今日は一緒にいたくない。」

僕の家の前で、車が止まった。

「これ…。」
「いらない。」

あいの言葉を無視して、車を降り、家に帰った。

もう、傷つけない為にも、傷付かない為にも、このまま、もう、終わりでいいんだ。
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