ラブレター2
『あのさ、やっぱり、あいが好きだから、戻ろうよ。』

不安になっては、また、自分から連絡していた。

一時間経っても、一日経っても、来なくなった返事に、また、不安になって、

『忙しい?元気にしてる?』

そんな言葉を、送っていた。

『うん。元気にしてるよ。』

直ぐに返される返事に、もう、好き。の言葉を言ってはいけない気がしていた。

あいの前では、いつも、子供のように、我が儘で、良い男になれない自分。

『あのさ、やっぱり好きだから、戻ろう?戻れないなら、曖昧な関係なら、いらない。』

こっち。に来てから、もう、一年の半分くらいが経っていた。

自分から言い出した、別れよう。から、半年の半分くらいが経っていた。

前なら直ぐに返ってきた返事も、どうせ、また、遅くなることを知っていたけれど。

失うのが嫌で、電話する勇気さえ、僕には無かった。

「おい、ゆう。飲みに行くぞ。」

下を向いて、隠しながらメールを打っていた僕に、突然、常連客のホストのお兄さんが、声をかけてくる。

慌てて、はい。と、返事をしたら、経営者のママから、もう、上がっていいわよ。と言われた。

「少し、待っててください。」

そう言いながら、裏に行き、カウンターの向こう側へ、足を運んだ。

「じゃ、行くか?」

最近、元気が無いぞ。と、頭を撫でられ、二人一緒に歩き始めた夜の街。

「金は気にするなな?」

と言われながら、僕は携帯電話を確認せずに、ただ、同じスピードで付いていく。

「いらっしゃいませ。」

開かれたドアの向こうから、カッコいい人達が、五人くらい。

扉の奥には、ギター、ベース、ドラム、楽器の数々。

「ゆうは、ミュージシャンになりたいんだろ?」

ギターを一本抱え、飛行機を降りたのは間違えなかった。

「ブラウン管の向こう側も良いけれど、こんなミュージシャン達もいることも、勉強だな?」

優しくしてくれる、ホストのお兄さん。

席に座って、女を三桁くらい抱いた。とか、男はこうなんだ。と、その生き方は、正しいのか分からないけれど、凄く気持ちが癒された。

ほら、作られたドリンクを、僕が飲んでいる間にも、隣に座っている若い女の子に話しかけているくらい。

少しだけ、退屈になり、携帯電話を開くと、

新着メール1件。

慌てて、ちょっと、電話してきます。と伝え、外へ飛び出した僕がいた。
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