殺戮都市
まずい……人を傷付けずに追い払えないかと言う気持ちと、日本刀を振るう事の恐怖で、やらなくて良い事をしてしまったか。


まだ大した事をしていないと言うのに、額から汗が流れる。


少し焦る俺とは対照的に、落ち着いた様子でジリジリと間を詰める女性。


木槌が良く似合う、ゴリラのような顔だ。


空気が痛い……。


肌を刺すような感覚に包まれて、迫られているのに身動きを取る事が出来ないくらいに。


今度は女性が牽制するように、木槌を俺に向けて突いてみせる。


一度……二度。


俺の実力を推し量るように。


そして一言。


「……あんた、人を殺した事がないね?」


そう言うと、満面の笑みを浮かべて木槌を横に振り、日本刀の刀身に当てたのだ。


強い衝撃が手に加わり、弾き飛ばされる日本刀。


斎藤の時と同じパターンだ。


一歩退いて、左手に持った鞘を振るけど、そんな物で女性は怯まない。


当たっても痛くない。


そう判断したのか、俺に身を預けるように、体当たりをして来たのだ。


力を込めずに振った鞘は、女性の身体に当たったけれどダメージなんてない。


そのまま女性と衝突し、俺はロビーの壁際まで吹っ飛ばされたのだ。
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