殺戮都市
隙を見せるとまずい。


そう思ってすぐに構え直した俺の目の前で、女性が腹部を押さえる。


なんだ……そんなに深く入ったか?


意識して人を斬った事がない俺には、どれほどの傷を負わせたのかが分からない。


でも……ボタボタと床に落ちる血液の量が、想像以上に重傷を負わせたという事を教えてくれた。


「あ……ああ……」


手では抑え切れずに、次々と流れ落ちる血液。


そして……内臓も押し出されるように飛び出して、女性はその場に崩れ落ちたのだ。


それが、どういう事なのか……俺が理解したのは、しばらく経ってからだった。


「あ、あわわ……」


我に返った俺は、足元でうずくまる女性に恐怖して壁に背中を付けた。


光の粒に変わらないという事は……まだ死んでいないのか。


微かにピクピクと動く身体を見て、俺は悩んだ。


これ以上苦しまないように、すぐに殺してやるべきじゃないかと。


人を殺したくないと、今でも思ってはいる。


だけど、この状況を作り出してしまったのは俺だし、このまま放っておいても助かるはずがないのだから、苦しまずに殺すべきだと。


怪物に喰われそうになっていた俺を、恵梨香さんが殺してくれたように。
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