殺戮都市
走りながら日本刀を両手で持ち、その覚悟も出来ないままに。


「あっ!!」


女が俺に気付いたのか、小さな声を上げる。


だけど男は気付いていない。


カウンターの前で立ち止まった男に迫り、俺は日本刀を思い切り振り下ろした。


止めようとする心を、別の気持ちが上回って。


甘さを振り払うようにして振り下ろした日本刀は、男の背中をバックリと両断して……悲鳴の一つも上げずに、目の前の男はその場に崩れ落ちたのだ。


こ、殺した……間違いなく殺した!


恐怖と不安に襲われて、身動きが取れなくなってしまいそうな身体を無理矢理に動かす。


まだ終わってない。


まだ女が残っている!


まるで自分の身体ではないような感覚に包まれながら、俺は踵を返して入り口へと走った。


壁にもたれて、口に手を当てている女。


あまり明るくないこのロビーで、それが辛うじて分かる。


人を一人、殺してしまったんだ……。


こいつも殺す!


この街に染まって行っている自分が嫌になる。


怯えた様子の女に近付き、日本刀を振り下ろそうとした俺は……その女の姿で我に返った。


女の前で立ち止まって……日本刀を下ろした俺は、それが信じられないと、首を横に振るしか出来なかったのだ。
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