殺戮都市
そこから、狩野の動きは俺の制止により精細を欠き始めた。


中川に斬り付けても、ワンテンポ遅れる。


そのワンテンポが中川の防御姿勢を取るのを間に合わせている。


何度かそれすら間に合わない事もあったけど、勢いが殺された刃は、中川の肉体を切り裂く事が出来ないでいたのだ。


「くそっ!くそっ!お前は引っ込んでなよ!私に任せれていれば、この街で一番強くだってなれるんだ!どうしてお前は私の邪魔をするんだ!」


まるで駄々っ子のように、他人の持ち物を欲しがっているだけ。


俺の弱さに付け込んで、俺から身体を奪ってしまおうと。


「……んな事」


この状況になって、やっと俺の声が出た。


狩野が俺に否定されて、支配する力が弱まっているのか。











「そんな事!俺は望んでいない!俺は元の世界に戻るんだ!みんなと一緒に!!」















そう叫んで、やっと外に出られた感覚があった。


水の中にいて、今、水面から顔を出したような。


だけど、まだ狩野とのせめぎ合いは続く。


「それは幻想だ!皆と元の世界に戻る!?そんな事は出来ないとなぜ分からない!」


「分からないから、俺は可能性を信じるんだ!バベルの塔に行けばそれが分かるって!」

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