殺戮都市
倒れている怪物に駆け寄り、慈しむように傷を舐めて。


怪物の間にも、愛情という物が存在しているのだろうと感じずにはいられなかった。


だけど、そんな事を俺に伝える為にこんな所まで来たっていうのか?


こんな事をしなければ、死ぬ事もなかっただろうに。


「!?……少年、この怪物は私が始末する。小さいとは言え、成長すれば人を喰らう怪物になる。そうなる前に、私が……」


何を考えているのか、俺の視界を塞ぐように立って、トンファーを抜く恵梨香さん。


いやいや、いくら何でもそれはあまりにも酷いんじゃないの?


怪物が、死にそうになってまでやって来た場所にいた、子供の怪物を殺そうなんて。


「待ってください恵梨香さん!どうしていきなり殺そうとするんですか!」


「相手は怪物なんだ、私達人間とは違うんだぞ!放っておけば、いずれ私達を喰らおうとするんだ!」


恵梨香さんが言ってる事は正しい。


この街に生きる者にとって、それは至極当然の行動で、間違っているのは俺の方。


そんな事は分かってる。


分かった上で、俺は怪物に付いて行くと決めたんだ。


その結末がこれじゃあ、あまりにも虚しすぎる。
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