殺戮都市
この周囲の怪物は、恵梨香さんとその仲間が片付けたのか、姿が見えない。


俺と一緒に歩く怪物もその事に気付いたのだろう。


ここまでの傷を負って、どこに行こうと言うのか。


「おかしな怪物だな。隣に食料があるというのに、襲おうともしないなんて。こんな怪物、見た事がない」


恵梨香さんも気になっているのか、俺達の後を付いて来ていた。


何か、妙な行動を取ればすぐにこの怪物を殺すつもりなのだろう。


そうならないように、俺は祈る事しか出来ない。


そして、歩いて歩いて、辿り着いたのは小さな公園。


集合住宅の中にある、遊具が少ない広場だ。


「こんな所に何があるってんだ?何を俺に伝えたくて来たんだよ」


公園に入ると同時に、もう限界が近いはずの身体を動かして、ドーム型の遊具へと歩を進めた。


「クゥゥゥン……」


今にも消えそうな声を出して、何かに呼びかけているよう。


よろよろと遊具に近付いた怪物は……その手前で力尽きたのか、ドサリと音を立てて倒れたのだ。


「お、おい……まさか死んだのか?この中に何があるって……」


と、俺が呟いた時だった。













遊具の中から……一匹の小さな怪物が現れたのだ。
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