恋の神様はどこにいる?

志貴、私が仕事を辞めたって聞いたら、なんて思うだろう……。

昨日の朝。家まで送ってもらう道中に、志貴から言われた言葉を思い出す。


俺はおまえが会社を辞めて、俺のところに来るって確信してんだけど───


そんなこと100%あり得ないって思っていたけれど。まさかそれが当たってしまうなんて。それもその日のうちに辞めることになるなんて、誰が想像できる?

まだ巫女になるって決めたわけではないけれど、本当に志貴のところに行くことになって。

正直なことを言うと、香澄に『直ぐに行動』なんて言われなかったら私はきっと、今も家でグズグズしていて神社には行かなかっただろう。

もちろんタイミングが大事なことだってわかってる。会いに行くのをズルズル先に延ばしたって、話が先に進むわけじゃないし。

でもやっぱり志貴に言われた次の日って言うのがちょっとだけ引っかかり、私を躊躇させてしまっていた。

「巫女に……なろうと思って」

「はあ!? 小町おまえ昨日、会社を辞めるつもりもない、俺の召使いにもならないって言ってなかったか?」

「言った……かな。まあ今でも、志貴の召使いになる気はないけど」

「同じことだろ。巫女になるってことは、俺の下で働くってことだからな。でも会社は?どうするんだよ?」

「辞めた……」

「何? 聞こえない」

「辞めてきた!!」

もうこうなったらヤケクソ。志貴にどう思われようが事実は事実で、辞めてしまったものはどうしようもない。

志貴の反応は気になるけれど、顔を合わせづらくて俯いた。



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