恋の神様はどこにいる?
階段を登っている間、志貴は一言も話してはくれなくて。ふたりとも黙ったまま、爽やかな風が吹き降りてくる階段をゆっくりと登っていく。

そして最後の階段を登り終えると、繋いでいた手がパッと離された。ただ普通に握られていただけなのに、それが無くなってしまっただけで急に心細くなってしまう。

本来面接なんて、ひとりで受けるものなのに。

「なんて顔してんだよ」

「え?」

いきなり振り向いた志貴が、私の顔を見て呆れたように笑う。

「たかが面接だろ。それにだ……」

途中で言葉を切った志貴は私に一歩近づいて、頭にポンッと軽く手を置いた。

「おまえには俺がいるだろ」

それだけ言うと頭から手を離し、クルッと元の向きに戻ってしまう。


オマエニハ オレガイルダロ───


まさかそんな言葉が、志貴から来るとは思ってもみなくて。頭の中でその言葉を何回も繰り返し言ってみても、なかなか意味が理解できない。

ねえ志貴。それは、どう解釈したらいいの?

志貴のことを好きになってしまった私は、ひとり勘違いしてしまいそうで怖い。

志貴の顔が見えれば、その顔色から少しは何かが読めたのかもしれないけれど。志貴は私に背中を見せたまま、こっちに顔を見せてくれることはなくて。

「行くぞ」

そう一言だけ呟くと、母屋に向かって歩き出してしまった。

私の心を惑わすだけ惑わせて、その真意を教えてくれないから、いつも翻弄される。

本当に、志貴は勝手。

でも……。

手が離れただけであんなにも心細かった気持ちが、今はどこにも見当たらなくて。何か心強いもので包まれているように、気持ちが落ち着いていた。






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